2006年 09月 14日
息も詰まる様な密室の中、斬激が交錯し、反射する光の軌跡が見るものの目を細めさせた。 いや、その細める目は眩さをやわらげる為だけでは無い。 高速の太刀筋を見極める為にも、その作業は互いに必要だった。 二人の剣士は俊敏に縦横を巡り、幾つもの軌跡を描く。 「やりやがる…」 濃紺色に身を包んだ男は、眉間に皺を寄せながら舌打ちをした。端正な顔に緊張が浮かぶ。 その表情の脇を鋭い突きがかすめてゆく。 「しつけぇ!」 悪態の呼吸から突き放す様な強打をあびせ、飛び退くと愛剣のスイッチを入れた。 耳につく高音が瞬時に轟音へと変化し、刀身が輝き始める。 手もとに描かれた光輪には目もやらず、溜めた腰を軸に、彼の全能力を光の刃に乗せた。 「ぶうっ裂く!」 光が一文字を描く瞬間だった。 獣の様にしなやかな影が懐に飛び込み、描かれるはずの文字が刃もろとも断ち切られた。 「!」 斬りざまの柄を強打され、それを落とさぬまでも必殺の一撃は阻止されたのだった。 「テスト完了です。模擬戦を中断して下さい」 緊迫した空間にそぐわぬ女性の声が響いた。 「終わりかよ」 気をそがれた男が太もものホルダーにパルサーショットを戻した。 「お疲れ様です、ソードウォリアー。任務は完了しました、後はごゆっくりお休み下さい」 オペレーターの声にソードウォリアーと呼ばれた男は鼻で笑った。 「はッ、終わったんなら帰らせてもらうぜ。おい手前ェ、決着はまた今度だ」 振り向き様、今まで剣を交えた相手に不敵な笑みを見せると、彼はトレーニングルームを後にした。 その背中を見つめる男の瞳には感情はあれど、前者の持つ命の光に比べ、冷めた光を放っていた。 「概ね順調、ですね」 「ミッションフォースの中でも手練を相手にしながら、あれだけ競り合う事が出来れば上等ですな。後は仕上げが残ってはいますが…」 この光景をモニター越しに、二人の男が観察していた。 上質なスーツを纏い豪奢なソファに体を預けた男が長い前髪を弄びながら、眼鏡に神経質な表情を隠した男へ話しかけた。 「あれでもまだ」 「ええ、実戦経験はありません」 無機質なメタルフレームの奥で狂気とも正気ともつかない輝きが誇らしげに光った。物言いからも、この男の顕示欲といったものが伝わってくる。それを受け止めるでもなく長髪の男が口を開いた。 「もう時間が残されていない事は承知していますね」 その声には深く冷たい響きが含まれていた。その意味を理解した眼鏡の男は身を震わせた。 「もちろん!私めも全能をかけて、計画は進めております!ご安心を…」 「その言葉、信じていますよ」 そう言いながら、既に彼の意識はその場に無かった。視線はただ一点、モニターに映る姿、冷めた表情のミクロマンを凝視していた。 そのミクロマン…ケルトの神の名を与えられた男が課せられた運命に気付くには、まだ時が手を持て余していた。 ---------------------------------------------------------------------------- (文章のリハビリ代わりに駄文を少々。マニューバーフォース結成前のルーグと模擬戦をおこなった某ミクロマンという設定で。ファンの皆様、どうか石を投げないで…一応話し方はマガジンゼロワン版を元にしてます。ホントはもう少しクールな物言いをさせたいんですけどね。ちなみにしばらくはノベル更新は無いはずですのであしからず。)
by ninesword
| 2006-09-14 23:24
| ミクロノベル
|
ファン申請 |
||